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「――と言う訳。便利アイテムが手元に残ったのは予想外だったなあ」
無闇やたらと苦痛に満ちた思い出を打ち明けられ、ルキは軽い頭痛を覚えた。本当に双方どうしようもない。言語で感情表現できない成人男性と純情な感情を受け止めもせずにまあいいかで片づける勇者野郎は、きっとお似合いなのだろう。破鍋には綴蓋って言うし。
思考が逃避へ走りそうになったところで、少女はひとつ違和感に気付いた。
「……ロスさんがいなくなっちゃったんだから、もう呪いは解けてるはずだよね?なんでバステアイコン付きっぱなしなんだろう」
「解けてないよ」
やけに確信に満ちた声で断言されてしまい、ルキは首を傾げた。呼び出されっぱなしのステータスを眺めつつ頭の中でゆっくりと10数えたが、アルバのHPは黄色で表示されたまま、数字を減らしはしなかった。
「耐性が付いたのか何なのか、HPダメージは無くなったんだけどね。代わりにあいつのことばっかり頭に浮かぶし、あいつのことを考えるだけで胸が痛いし息が苦しくなるし時々無性に泣きたくなるし。総合的に見たら悪化してるんじゃないかなあ」
少女は思わず勇者の表情を窺った。照れた様子も冗談の気配もまるで見当たらず、どうやら本気で言っているらしいということが分かってしまった。
「早いとこ探し出して、二人揃って解呪してもらわないとね」
アルバはそう言って笑ったけれど、ルキは笑うことさえ出来なかった。
このひとは一体いくつ呪いを掛けられているのだろう。
本当に、心の底から、どうしようもないと思った。