101号室 牢獄まで何マイル 2*(完) 忍者ブログ

101号室

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牢獄まで何マイル 2*(完)

 

 光を背負っているせいで顔はよく見えなかったけれど、三人組が誰なのかはすぐに分かった。一人は同室のマイク。隣に立つちびで眼鏡のサイモンは、タバコを持ちこむルートを握っているとかで、いつもおいしい思いをしている。頬に傷のある筋肉質の男は、元フットボール選手のランドルフ。燃えるような赤毛の下で意地の悪い緑の眼が光っていた。

 この刑務所に収監されている囚人の数は五百を下らないけれど、この三人の顔だけは新入りのボクも覚えている。夢に見て、その度吐きそうになりながら飛び起きるほどにはっきりと。

「よお、ロリコンの坊ちゃんじゃねえか。ひとりでシコシコやってないでまた一緒に遊ぼうぜ」

「やだ、や、来るなぁ……!」

 一番上背のあるランドルフがにやにや笑いながら近づいて来る。後退りするって言ったって、この部屋は狭い。すぐに背中が奥の壁に当たり、立てかけてあった自在帚数本が音を立てて転がった。

 歯の根ががちがちと鳴り、震えが止まらない。怖い、いやだ、やめろ、たくさんたくさん湧き上がるものは全部喉のところで潰れてしまって、言葉になれずに詰まっていく。水が流れる音と一緒に、ボクの身の内にはどろどろした恐怖が流れ込むようだった。

 この前。八日前と三日前、図書室の隣で。その時もこいつらは三人一緒だった。

 この牢獄に送られてくるのは、殺人やら強盗やらをやらかした凶悪犯が多い。そういう人たちは何処かの大きな犯罪集団に所属している割合も高くて、だからというのか、面子とか男らしさとか、そういうものにやたらと拘る。舐められたら負けだから、自分が強いってところを見せなくちゃいけない。そのためにはサンドバッグが必要であって、それが血と肉で出来ていて、犯罪者の中でも一番卑劣な部類なら尚いいらしい。つまり、ボクだ。

 連中の歩幅は次第に大きくなって、倉庫の湿った暗闇よりも更に濃い影がボクの体をすっぽり覆った。節くれだった、大人の男の掌が伸びてきて、ボクの襟首を掴み上げる。掃除用具の散乱する薄汚れた部屋の真ん中に放り出され、抵抗する間もなくズボンと下着を剥ぎ取られてしまった。思わず情けない声が漏れてしまった。

「ひ……やだぁ、お願い……やめて、やめてよ、」

「そう大袈裟に嫌がんなって。初めてでもないんだしさぁ」

 腹に一撃。呻いてる間に仰向けに転がされて胴に乗り上げられ、右腕を掴まれる。嫌な感じにじっとりした掌から男の体温が伝わってきて、吐き気と一緒に思い出したくもないあれこれがフラッシュバックする。打たれて、殴られて、痛くて痛くて、それから。

 泣こうが喚こうが誰も助けてくれないし、それどころか向こうが腹を立ててより一層手荒くなるだけなのだった。相手がボクだから。

 三人揃って、愉快で仕方ないと言った表情で、黄色い歯を剥き出しにしていた。ボクが恐怖で上手く息も出来なくなっている有様はそんなに面白いのだろうか。体の震えと涙が止まらない。また殴られて、口の中に血の味が広がった。連中は顔だろうがどこだろうが構わずに手を出してくる。痛い。くるしい。

「今日は面白いもん用意したから、坊ちゃんで試させてもらうぜ。なあサイモン」

「ああ」

 陰気なサイモンがポケットから取り出したのは、中に透明な液体の入った小さなガラス瓶だった。そして、注射器。見た瞬間に物凄く嫌な予感がした。

「……やだ!やだ、何する気だよ!離せよぉ!!」

「おいマイク、こいつ押さえんの手伝え」

 肥満気味の身体が後ろに回り込んで、ボクの肩と腰を固定する。上半身も下半身も大人の体重を掛けられて、逃げ出すことなんて出来なかった。

「暴れんなよ」

 耳元で、とても楽しそうに囁かれる。寒気と眩暈。

「刺してるときに暴れたら、血管の中で針が折れるかもな。そしたらどうする?体の中ズッタズタになったって誰もお前のことなんて助けてくれないぞ」

 そうだ。ボクのことなんて誰も助けてくれないんだ。

 そう思ったら一気に力が抜けてしまって、あ、と思った時にはもう、腕まくりされた二の腕に注射針が突き刺さっていた。シリンダーが押し込まれて、内側に何かが入ってくるじわじわとしたあの嫌な感じに襲われる。何もかもをただぼんやりと受け止めていることしか出来なかった。

 針が抜かれた。血の玉が浮かぶ。当然、止血の時間なんて貰えなかった。四つん這いになれと言われて、がくがく震える手足のせいで何度も失敗しながら、それでも命令に従った。なにもかも全部嫌で、その中でも余計に殴られるのが今は一番嫌だった。スクイージーで搔き出しきれなかった汚水が、ボクの掌の下でびちゃりと音を立てた。

「ほらほらお嬢ちゃん、もっと尻上げてぇ」

 お嬢ちゃん、を強調して囃し立てられる。ボクはまた言われた通りにする。今日はオレからだよなというマイクの声。それから、お尻の穴に、多分指が一本入って来た。ぎちぎちだぜ幼女趣味は違うなあなんて酷い会話が聞こえる。申し訳程度に湿ったもので引っ掻き回されるのはただただ痛いのだけれど、この工程をすっ飛ばしていきなり太いものを突っ込んだりすると、痛いとかそういう言葉では済まされないことになる。ボクも相手も。一回目でそれを思い知ってからは、彼らは自分のために手順を踏むようになった。

 乱暴に抜き差しされて指を増やされて広げられて、腹の中に空気を送り込まれているみたいだった。悲鳴を堪えて汚い床に頭を擦り付けていたら、前髪を鷲掴みにされて引っ張り上げられた。木箱の上に腰を下ろしたサイモンがボクを見下ろしていた。

「お口ヒマだろ?咥えてくれよ」

 ズボンと下着は下ろされていて、そこから覗く赤黒いモノは既に半分勃起していた。ひ、と喉が鳴るのを押さえられなかった。ぐいぐいと頭を引かれ、見たくもないものに顔を近づけさせられる。閉じた唇の間に何度も擦りつけられて、もう嫌で、観念して口を開けた。酷い臭いがした。

「歯ァ立てたら殺すからな」

 脅しだっていうのは分かっている。幾らボクだって殺したら彼らの刑期は伸びるのだ。だけど体は全然言うことを聞かなかった。押し入った性器に歯が当たらないように目いっぱい顎を開き、上からの声が命じるままにひとりでに動いてしまう。裏筋を舐め上げて、亀頭を頬の内側に擦りつけて、頭を上下させて陰茎全体をしゃぶって、尿道に舌を突っ込んで。汗を濃くしたみたいなしょっぱい味がして、また泣きたくなった。言われたことをこなす度にサイモンのそれはどんどん固くなって、ボクの上顎を擦りはじめる。後ろの方からはぐぽぐぽ指を抜き差しする音が続いていて、異物感と恐怖で脚が萎える度に思い切り尻を叩かれた。痛みで口を閉じそうになると、今度はサイモンに殴られる羽目になった。

「そろそろいいか」

 マイクの声にサイモンが舌打ちをして、ボクの口から陰茎を引き抜く。ああ、と思った。嫌だ。嫌だ。やめてほしいのに。こんなの、

「っうぐ、や、……ひぅう、」

 みちみちと肉が押し広げられるみたいな音がして、狭い穴に太いものが押し入ってきた。裂けて血が出るようなことにはなっていないと言って、三日前にやられた時の腫れがまだ引いていないから、中を擦られる度にひりひりと痛むのだ。歯を食いしばって必死に耐えているうちに、マイクの性器はずぶずぶボクの体に埋まって行き、尻に陰嚢が当たるのを感じた。

 全部入ってしまった。また、強姦された。

「っひ、うぁあ、やだ、やだあぁ……」

 嗚咽が勝手に口から漏れて、三人はそれを聞いてげらげらと笑った。

 マイクがゆっくりと抜き差しを始め、びりびりした痛みに悶えるうちにサイモンがまたボクの頭を掴む。顔をぐちゃぐちゃにして泣きながら、目の前のグロテスクなものに舌を這わせた。

 異変が起きたのはその時だった。

「……っ!?や、なに、何これやだ、ぁ、ああぁああ!」

 急に耳の聞こえが良くなったような変な感じに襲われたと思ったら体がへんにぞくぞくし出して、痛いだけだったはずのお尻が物凄く気持ちよくなって触られてもいないおちんちんが張りつめて後ろをきゅうと締め付けてしまって中にはいっているものの形が分かるほど絡み付いて気持ちよくて、涎がだらだら出て気持ちよくて頭が溶けちゃいそうなくらい気持ちよくて、目の前が真っ白になって、

 

 頬を叩かれるまで意識が飛んでいたらしい。やっと効いた、こいつ後ろでイきやがった、何か色々と聞こえはするのだけど、頭がぽやぽやして意味が良く分からない。体の震えが止まらなかった。さっさと続きしろよと言われて、続きが何なのか思い出せないまま、目の前のものを口にいれた。さっきから溢れて止まらない涎をいっぱいに絡めて、じゅぱじゅぱ、じゃぷじゃぷとしゃぶって吸い上げる。口の中全部を使って一生懸命に舐めた。頬の内側を擦られるとまた腰のぞくぞくが溜まってきて気持ちよくて、まるで訳が分からなくなった。硬いところと柔らかいところがボクの舌に擦り付けられる。頭を掴まれて道具みたいに出し入れされ始めたころ、ずる、と、体の中から何か抜けていき、零れだすのを感じて、内腿が震えた。

 目の前の人が息を詰めて、ボクの喉の奥に苦くて生臭いものを流し込んだ。上手く飲み込めなくて、噎せて、でも咳をするためにお腹に力を入れるとそれだけでまたあの変になる感じがして背骨の所に熱いのが集まってくる。さっき出したはずなのに、また前が硬くなっていた。

「ひぃあ、あああぁあ、……っぅあ、あ!」

 もっと気持ちよくなりたくて必死に自分の手で擦って、掌の中に射精した。でもまたすぐ勃起してしまう。足りない。擦っても擦っても足りない、もっと欲しい。どうして。もっと。気持ちいいの足りない、ぐちゃぐちゃなのがいい、いっぱい欲しいのに。

「なあお前、自分が何言ってんのか分かってる?完全にトんじゃった?」

 赤い髪の人がボクを覗き込むようにして見ている。分かんない。でも気持ちよくなりたくて、全然足りない。そう言ったら緑色のよくないものがぎらぎら光った。おねだりしてみよっか。ボクのケツマンコにちんこぶちこんでくださいって。そこの箱に乗っかって股開いて誘えたらちゃんと気持ちよくしてやるよ。

 気持ちよくしてくれるんだと思って凄く嬉しくなった。箱、と聞こえたから、なんとか木箱の上に座って、脚を広げて、とろとろ何かが溢れ出てくるお尻の穴が見えるようにした。さっきからここがひくひく疼いて仕方なかったから、きっとここに入れてもらえばいいのだ。舌を噛みそうになりながら、聞いたことを思い出して、頑張って声に出した。

「ぼくの、けつまんこに、おちんちん、いっぱいいれてください」

 口笛と拍手が聞こえてきた。よくできましたー。褒められて、また嬉しくなって、笑った。

 赤毛の人がズボンを下ろして、ボクの腰を掴んだ。ひくん、と動くお尻に熱いものが当てられて、あ、と思ったら、次の瞬間には太いのが中に入り込んできた。ぐちゅぐちゅ泡立つような音と一緒に勢いよく出したり入れたりが繰り返される。ボクは悲鳴を上げていた。これが欲しかったんだ。

「やぁ……っぅあ、きもちぃ、きもちいよぉ、うあぁ、あ、……ああぁあ、ひ、もっと、ほし、ぁああ、っ!」

 鳥肌が止まらなくなって頭がばかになって、もう何を言ってるのかぜんぜん分かんなくなってしまって、お尻の穴はずっとひくひくしていて中をごりって擦られるたびにおちんちんからぴゅくぴゅく液が飛んだ。淫乱、変態、雌犬野郎、たくさん何か言われた。全部分かんなかった。だって体じゅうの血が沸騰して脳味噌を作り変えられてるみたいな物凄くて凄い感じが何回も頭を殴りに来るんだ。声が止まらない。腰が勝手に動いて、中でボクを抉っている熱くて気持ちいいものに体の一番奥まで汚して欲しくて、本当にどうしようもなかった。出し過ぎだから押さえとけって言われておちんちんをぎゅっと握らされた。おく、奥突いて、いっぱい突いて、ぐちゃぐちゃにして、って叫ぶ高い声が自分の喉から出ているのにも、しばらく気付いていなかった。

 前から出せなくなったら今度はお尻の中が余計にびくびくきゅうってして咥えたものをいっぱいしゃぶってしまうから、ぐいっと引っ張り上げられたみたいに気持ちいいのがずっとずっと続いて終わんなくて怖くて怖くてでももっと欲しいって思う。ぐぷんぐぷんって中に入ってるものをかきまわす音がする。死んじゃうって思った。そのくらい気持ちよくて、本当に気持ちよくて、全部全部全部気持ちよかった。

 出る、って聞こえた。熱いのが中に出てボクはまた高い声を上げてしまった。

「ひぁあっ!……あ、あぁああ、なかきもちぃ、あつい……、ひぅ、ぅあ、ああぅ、」

 ぐり、と、一番真っ白になるしこりを擦られて泣いてそれでもまだ欲しがって、中に入れられたまま自分の指まで突っ込んで、そこから先は何も覚えていない。

 

*

 

「お疲れさん。また頼むよ便器ちゃん」

 きい、ばたん。一度明るくなって、また暗くなった。全身がバラバラになってしまったんじゃないかと思うくらいにどこもかしこもぼろぼろだし、眩暈と頭痛と吐き気のせいで何を考えることも出来ない。ボクはどこにいるんだろう。何をしていたんだっけ。

 分からなかった。分からないことにしようと思った。さっきまで散々泣き叫んでたくせに、まだ涙は零れてくる。

 痛くて、苦しくて、辛くて、嫌で、悲しくて、身じろぎもせずに狭くて暗くて汚い部屋の中に倒れたままでいた。どうしてこんなことになってしまったんだろう。ボクはこんな目にあわなきゃいけないことをしたんだろうか。教えてくれる人はいない。ひとりぼっちだから。水の音はいつの間にか止まっていて、この部屋で音を立てるのはもうボクしかいなかった。

 真っ暗な心の中に、一緒に旅をしていた彼の顔が浮かんだ。その途端にまた嗚咽が漏れた。

「やだ、もうやだ帰りたい、……戦士、ねえ、助けて、」

 馬鹿みたいな喘ぎ声を上げ続けていたせいで、喉はがらがらだった。

 

 眠りに落ちる寸前、暗闇より真っ黒な穴と緑色の何かが見えたような気がした。

 でも、夢だったのかもしれない。

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