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耳の奥で蠅が呻っているような錯覚があった。それを振り払おうと、トイフェルは腰を鋭く突き込んだ。掠れた声が上がり、性器を咥え込んだ狭い粘膜がまたびくりと波打った。
広げた脚を己の手で支え、青ざめた肌を熱病か何かのように火照らせて、かつての勇者はもっともっととねだるように下肢を揺らす。火の色をした瞳は熱くぬめるものに融けてしまい、既に正気の光は遠かった。涙と涎をだらだらと零しながら、シオンは弱々しく首を振る。何を拒絶する訳でもなく、ただ脳を掻き回す快感の奔流をやり過ごすための動きだった。湿り気を吸い込んで重くなったシーツに、ぱさぱさと黒い髪が踊った。
「んあ、あああぅ、ふ、おくに、奥にほし、っぅ、」
「っはいはい、どうぞ」
「ひっあ、っ、……ああぁあ!」
求められるがままに狭くなっている部分を穿つと、青年は悲鳴のような嬌声を上げて達した。赤く腫れた性器がびゅくりびゅくりと吐き出す液体は最早透明に近かった。断続的な強い締め付けを眉を顰めてやり過ごし、トイフェルはまた内壁を抉る。ぐちゅり、とかき回す音が体を浸し、それと同時にシオンが大きく息を飲むのを聞いた。射精したばかりの身体は酷く敏感で、出し入れを繰り返し粘膜を擦る度に細い腰ががくがくと震えた。
「うぁ、ああぁあっ、ぐ、うぁあああぁ、ひ、っぁああ!」
喘鳴交じりに、壊れた機械のように泣きながら、しかしシオンから静止の言葉は出なかった。はらわたは交合を悦ぶようにめちゃくちゃに痙攣し、トイフェルの性器をしゃぶり続ける。ドライオーガズムが近いようだった。腰を掴んでいた手を上体の方に進めると、その感触すら刺激になったのか、また艶を帯びた声が上がった。突き抉る動きを止めないままに、人形じみた顔を覗き込む。ぐちゃぐちゃに掻き回された眼は夢でも見ているように揺蕩っていたが、トイフェルの憐れむような眼差しを受け取ると、一瞬だけ焦点を合わせ、不快気な表情を形作った。半開きの口からはぬらぬらと光る舌が覗いていた。くび、と。くちびるの動きだけでそう告げて、壊されるばかりの男は震えながら笑う。トイフェルは溜息を吐いた。
マゾヒズム、と呼びうるほどの高尚なものではなかった。自己破壊願望を外側に転化したに過ぎない醜く悍ましい衝動だった。要するに、この男は罰せられたかったのだろう。それなのに彼の勇者はあまりに優しくて愚かで残酷だから、抱えた罪の選別すらしないまま全て一緒くたに赦してしまった。シオンはアルバを汚せない。だからこうしてトイフェルを引き倒し、壊してくれと傲慢に懇願する。断られることがないと知りながら。
つめたい掌で皓い喉に触れると、満足げな吐息が漏れ聞こえた。おとがいに指を掛け、力を込めはじめると同時に、内壁の蠕動が激しくなり、シオンが達したのを感じた。蠅の呻りが酷くなった。