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(四月馬鹿達の宴 / シルクちゃんとあなた)
*
「四月馬鹿達の宴にようこそ。そして、あなたの帰還に感謝します」
気取った口調でシルクハットの彼女は言った。突然のことにあなたは怪訝な顔をする。
「パロディとリスペクトってやつさ。本当にこの言葉を受け取るべき人間はもういなくなっちゃったんだけど」
あなたには彼女の意図するところは分からなかったが、その顔が酷く寂しそうだったので背伸びをして頭を撫でてやった。すると彼女は少しばかり照れくさそうにした。あなたは微笑んだ。
「戻ってきてくれてありがとう」
一緒に灰色の男たちを消し去ってやろう。あなたはその言葉に頷きかけたが、少し考えてから首を傾げた。消し去ってしまっていいのだろうか。そんなことをしたら、彼らのことを大切に思っている人が悲しむのではないか。あなたがそう伝えると、彼女は静かな声で反論した。
「……そんなものいない。あいつらのことを好きなやつなんてひとりもいない。あれらは灰色の男で私達の敵だ、それ以上もその先もそうぞうする必要はないよ」
あなたは彼女ほど灰色の男たちのことに詳しくはないので、何も言い返すことはできなかった。ただ、彼女がとても辛そうなことが気がかりだった。
「私から大事なものを奪ったあいつらに復讐してやるんだ。私には、もう、何もない」
あなたは黙って彼女の手を取り、あなたの胸の所に持って行ってやった。あなたは彼女を慰めたかったのだけれど、彼女は唇を噛んで俯いてしまった。